困ったリスクアセスメント
― Tacit が働かないとき、現場で何が起きるのか ―
現場でリスクアセスメントを行うとき、私たちはしばしば「評価しているつもり」で、実際には Tacit(暗黙知)が働かない状態 に陥ってしまうことがあります。
その結果、危険性は自然に立ち上がらず、帳票の整合性や形式的な対策だけが積み上がり、本当に必要な“安全の知”が失われていきます。
本稿では、SPUS が提唱する Tacitability Fountain の視点から、 各主体が陥りやすい「困ったリスクアセスメント」を整理し、
なぜ危険性が見えなくなるのか、その構造を明らかにします。
評価者 : リスク穴埋めント あなうめる 形骸
技術者 : リスク余らせント あまらせる 手抜
管理者 : リスク網掛けント あみかける 隠蔽
経営者 : リスク当て付けント あてつける 恫喝
助言者 : リスク焦らせント あせらせる 空言
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作業者 : リスク汗消えント あせきえる 懸念
被災者 : リスク足抜けント あしぬける 恐怖
救護者 : リスク誂えント あつらえる 扶助
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弱い人 : リスク諦らめント あきらめる 失意
強い人 : リスク抗えント あらがえる 孤立
困ったリスクアセスメントの構造
各主体が陥る「困ったリスクアセスメント」は、無意識の隠蔽・迎合・拒否・恫喝・空言・恐怖・孤立といった心理的反応によって Tacit(暗黙知)が働かず、危険性が自然に立ち上がらない状態です。
その結果、リスクは本来の意味で「評価される」のではなく、処理される・押し付けられる・逃げられる・諦められる、といった歪んだ形で扱われ、真の安全性が損なわれていきます。
Tacitability Fountain に基づく 5Rs は、これらの無意識反応を解除し、身体知・直観・経験知が自然に働くプロセスへと変換することで、危険性が“見える”形で立ち上がるリスクアセスメントへと再構成します。
1. 上位主体の困ったリスクアセスメント
◎評価者:リスク穴埋めント(あなうめる/形骸)
評価項目の「穴」を埋めること自体が目的化し、帳票の整合性が優先されるTacit が働かず、危険性の“意味”が消え、形式だけが残ります。
◎技術者:リスク余らせント(あまらせる/手抜)
危険な状態を「余らせる」ことで、技術的判断が表層化します。見せかけの安全策や不十分な対策が積み上がり、真に重要な危険性が埋没します。
◎管理者:リスク網掛けント(あみかける/隠蔽)
問題を“網掛け”して見えなくすることで、管理の安定を優先します。危険性は存在するが、組織の都合で覆い隠され、Tacit が働く余地がなくなります。
◎経営者:リスク当て付けント(あてつける/恫喝)
リスクを「当て付け」の材料として使い、恫喝的な指示が生まれます。恐怖によって Tacit が完全に停止し、危険性はむしろ増幅します。
◎助言者:リスク焦らせント(あせらせる/空言)
助言が「焦らせる言葉」となり、実質的な支援ではなく空言に変質します。焦燥感が Tacit を乱し、危険性の本質が捉えられなくなります。
2. 現場主体の困ったリスクアセスメント
◎作業者:リスク汗消えント(あせきえる/懸念)
汗を拭うように懸念を「消してしまいます』。不安を抱えたまま行動し、危険性の兆候が Tacit に届きません。
◎被災者:リスク足抜けント(あしぬける/恐怖)
恐怖から「足抜け」し、危険性を直視できなくなりまする。経験知が封じられ、再発防止の知が共有されません。
◎救護者:リスク誂えント(あつらえる/扶助)
救護の行為が「誂えられた役割」になり、形式的な扶助に留まります。Tacit が働かず、状況に応じた柔軟な救護判断が生まれません。
3. 社会的主体の困ったリスクアセスメント
◎弱い人:リスク諦らめント(あきらめる/失意)
「諦め」を選択し、危険性への働きかけを放棄します。Tacit が閉じ、社会的安全文化が弱体化します。
◎強い人:リスク抗えント(あらがえる/孤立)
抗うことで孤立し、危険性の共有が断絶します。孤立は Tacit の流通を止め、リスクが個人に閉じ込められます。
4. Tacitability Fountain による再構成
これらの困ったリスクアセスメントは、いずれも Tacit の不作動によって危険性が立ち上がらない構造を持ちます。Tacitability Fountain
は、無意識の拒否、隠蔽、迎合、恐怖、恫喝、孤立といった心理的ブロックを解除し、5Rs(Retrieve / Reveal / Render /
Relate / Resolve)を身体知・直観・経験知が働くプロセスへと変換します。その結果、危険性は「押し付けられるリスク」から「自然に見えてくるリスク」へと転換し、組織・現場・社会のすべてが“見えるリスクアセスメント”
を共有できるようになります。
困ったリスクアセスメントは、評価者の「穴埋め」、技術者の「余らせ」、管理者の「網掛け」、経営者の「当て付け」、助言者の「焦らせ」、作業者の「汗消え」、被災者の「足抜け」、救護者の「誂え」、社会的主体の「諦らめ」「抗え」といった形で現れます。これらはいずれも
Tacit が働かないときに起きる『心理的ブロック』であり、 危険性が見えなくなる構造を持っています。SPUS の Tacitability
Fountain と 5Rs は、この『心理的ブロック』を解除し、身体知・直観・経験知が自然に働くプロセスへと変換する技法です。リスクを「押し付けられるもの」からリスクが「自然に見えてくるもの」へ。SPUS
はその転換を支える安全文化づくりを目指しています。
本稿は、SPUS が取り組む「見えるリスクアセスメント」の基礎となる考え方をまとめたものです。現場・組織・社会のすべてが Tacit を取り戻し、危険性を自然に共有できる安全文化を築くための一助となれば幸いです。