SPUS が取り戻す ISO が失った創造的思考

 

ISO が失った「創造的思考」と、SPUS® が取り戻そうとしているもの

SPUS 有用安全考房では、2026 年より Tacit を活かした危険性同定の実感研修を開始します。この研修を企画した背景には、国際規格の変遷と、現場のリスクアセスメントが抱える深い課題があります。

1. ISO から消えた「創造的思考」という思想

かつて ISO/TR 14121-2:2007 には、危険性同定を「創造的思考の場」として守るための条文がありました。【5.3.4 Creative thiking】

● 危険性同定の段階では、確率・重大性・保護方策を考えてはならない
● それらは創造的思考を阻害するため、後段で行うべきである

これは、危険性同定を“まだ言語化されていない違和感や気づき”を扱う領域として捉えた、非常に重要な思想でした。しかし、2010年の ISO 12100 への統合で、この条文は完全に消えました。
国際規格は「再現性」を優先するため、人間の創造性や Tacit のような“揺らぎ”を扱うことが難しい、という構造的な理由があったからです。その結果、危険性同定は世界中でリストを埋める作業へと変質していきました。

2. 危険性同定は本来「Tacit の領域」である

心理学の研究では、危険性同定に必要な思考は次の3つに分類できます。

● 拡散的思考(まだ形にならない可能性を広げる)
● リスク許容性(起きてほしくない未来をあえて想像する)
● 暗黙の制約外し(“普通は起きない”という前提を外す)

これらはすべて、評価軸(確率・重大性)を提示されると即座に抑制されることが分かっています。つまり、危険性同定は、評価や分析の前に Tacit が揺らぎ始める場をつくることが不可欠です。ISO が創造的思考を削除したことで、この「Tacit の場」が失われてしまい、リスクアセスメントは有形無実化しました。

3. SPUS が行知萌芽の思想で再構築する「Tacit の場」

SPUS は、文章や手順ではなく、人の心にある Tacit を直接扱うという立場です。行知萌芽の思想では、知は「行」から生まれ、その前段階には必ず「萌芽」があります。危険性同定はまさにこの「萌芽」の領域です。

SPUS の実感研修では、

● Tacit Pieces を用いて
● 言語化を急がず
● 評価軸を排除し
● 参加者の Tacit が静かに揺らぎ始め
● その揺らぎから危険性が立ち上がる

というプロセスを通じて、
ISO が文章で守れなかった創造的思考の場を体験として再構築します。

4. SPUS 実感研修の目的

このような背景から、SPUS は Tacit を活かす危険性同定の実感研修を企画しました。

目的はただ一つ。
現場の Tacit を取り戻し、
本来のリスクアセスメントを再び“生きたもの”にすること。

危険源同定、危険状態同定、危険事象同定は、本来「人の心の中で揺らぐ Tacit」から始まります。SPUS は、その原点に立ち返るための最小限で、しかし、本質的な学びの場を提供します。



※ 補足:SPUS が扱う「危険性同定」とは

SPUS の実感研修で扱う危険性同定は、ISO 12100 の構造に基づきながら、Tacit を中心に据えて次の3つを丁寧に扱います。

● 危険源同定  機械・材料・環境などに潜む「源」を見つける
● 危険状態同定 その源が“危険な状態”に変わる種々の条件を見つける
● 危険事象同定 その状態が“事象”として立ち上がる瞬間を想像する

これらは本来、言語化される前の Tacit が揺らぐ領域です。SPUS の実感研修は、この Tacit の揺らぎを丁寧に扱い、危険性同定を“生きた学び”として取り戻すための場です。

2026年05月01日