四字熟語で表現するSECIモデル

SPUS 有用安全考房の知識創造を詩的に可視化する

 SPUS 有用安全考房は、ナレッジマネジメントの理論的基盤であるSECIモデル(共同化・表出化・連結化・内面化)を、詩的かつ文化的に再構成する試みとして、各プロセスに対応する四字熟語を選定いたしました。これは、知識創造の流れを日本語文化の深層と接続し、実践の場においてより豊かな理解と共鳴を促すものです。

SECIモデルとは

 SECIモデルは、野中郁次郎が提唱したナレッジマネジメントの中核をなすフレームワークです。暗黙知と形式知の相互変換によって、知識が創造されるプロセスの理論において、

共同化 : 暗黙知の共有 (Socialization)
表出化 : 暗黙知を形式知へ変換 (Externalization)
連結化 : 形式知の体系化 (Combination)
内面化 : 形式知を暗黙知として体得 (Internalization)

の4段階で構成されます。この流れを詩的かつ実践的に表現するため、以下の四字熟語を対応させました。

共同化 = 教学相長(きょうがくあいちょうず)戴聖「礼記」より

 教えることで学び、学ぶことで教えが深まるという相互成長の構造を表します。SPUS 有用安全考房の共同会や研修における暗黙知の伝え合い・育ち合いを象徴し、マネジメントシステムの基盤として、知識の基盤を形成する言葉です。参加者同士が教え手であり学び手でもあるという場の構造を示し、知識の共有が共鳴と深化を生むことを示唆します。

表出化 = 知行合一(ちこうごういつ)王陽明「伝習録」より

 実践を通じて語られなかった知が言語化・図式化されるプロセスを表します。SPUS 有用安全考房の評価法や記録化の活動に通じ、知と行が一致することで、暗黙知が形式知へと昇華されます。技術と倫理が統合される場が生まれ、実践に根ざした知識が言葉として立ち上がる瞬間を象徴します。

連結化 = 温故知新(おんこちしん)孔子「論語」より

 過去の知見を再構成し、新たな理論や枠組みを創出するプロセスを表します。ELSEWHY Archives(何処にもない、何も起きていない理由)の編集と継承の営みに深く関わり、形式知の体系化と普遍化を担う段階です。記録された知が未来の安全文化を育む礎となり、過去と現在をつなぐ知の編集行為が、次なる創造へとつながります。

内面化 = 行雲流水(こううんりゅうすい)蘇軾「与謝民師推官書」より

 理論や記録が、実践や感性を通じて自然に身につくプロセスを表します。安全文化の浸透と詩的実践を象徴し、形式知が再び暗黙知として体得される流れです。知識が身体化され、日常の判断や行動に自然に現れるようになることで、文化としての安全が根づいていきます。

共助のための伝え合い・育ち合い

 このように、SECIモデルの4段階を四字熟語で詩的に可視化することで、SPUS 有用安全考房の活動における知識創造の構造がより明晰に、かつ、文化的に響くかたちで表現されます。中でも「教学相長」は、知名度こそ高くないものの、共助のための伝え合い・育ち合いの精神を最も的確に表す言葉として、SPUS 有用安全考房の共同化の象徴といえます。

 SPUS 有用安全考房は、この構図を研修資料やプロファイルに展開し、有用安全の思想を広く伝えるとともに、知の濃度と共鳴の質を守る場を作りつづけます。

2025年12月01日